1962年バロンドールに相応しいのはマソプスト?ガリンシャ? - サカなん
サッカーのデータ一覧 > バロンドール > ヌーボー・パルマレス・バロンドール > 1962年バロンドールに相応しいのはマソプスト?ガリンシャ?
バロンドールは元々、欧州年間最優秀選手賞として1956年に作られた。それから1994年までの39年間はヨーロッパ国籍の選手限定のまま表彰を続けていた。1995年に初めて、UEFAに加盟するクラブチームに所属しているという条件付きではあるが、対象者の国籍を問わないことになった。2007年からは、UEFAに限らず、全世界のリーグも対象となり、晴れて「世界年間最優秀選手賞」の扱いになったのである。とは言え、ワールドクラスの選手がヨーロッパのリーグに一堂に会する現代のサッカー界なのだから、1995年からでも実質「世界年間最優秀選手賞」と言って差し支えないだろう。
このような歴史的背景から、バロンドールを創立したフランス・フットボール誌は、2016年のバロンドール60周年に際し、1994年以前の受賞者を再度評価し直した。つまり、「創立当初からバロンドールが全世界の選手を対象にしたものだったら受賞者は誰になっていたか」を仮想したのだ。その内12回が、再評価の結果、正規の受賞者とは別の選手が受賞に相応しかったという結論に至った。
12回の内の一つ、1962年バロンドール。正式な受賞者は、チェコスロバキア国籍のヨゼフ・マソプストだ。しかし、フランス・フットボール誌は、ブラジルのガリンシャが受賞に相応しかったと認定した。ここでは、その理由を考察していく。
正式な受賞者 | 再評価された選手 | |
選手 | ヨゼフ・マソプスト | ガリンシャ |
国籍 | チェコスロバキア | ブラジル |
所属 | デュクラ・プラハ(チェコスロバキア) | ボタフォゴ(ブラジル) |
ポジション |
MF |
FW |
チーム タイトル |
・チェコスロバキアリーグ優勝 |
・リオデジャネイロ州1部リーグ優勝 ・リオ・サンパウロリーグ優勝 ・FIFAワールドカップ優勝 |
主な個人 タイトル |
|
・リオデジャネイロ州1部リーグ最優秀選手賞 ・リオ・サンパウロリーグ最優秀選手賞 ・FIFAワールドカップ得点王(6試合4得点) |
その他 要素 |
・FIFAワールドカップ準優勝 ・FIFAワールドカップ最優秀選手2位 |
|
1962年FIFAワールドカップ
1962年のサッカー界における最も大きなイベントと言えば、やはりFIFAワールドカップのチリ大会だろう。
言うまでもなく同大会でインパクトを残せばバロンドールの選考基準にも大きく影響する。
そして、この大会ではチェコスロバキアがヨーロッパ勢最高位となる準優勝を果たしており、その躍進の中心にいたのがゲームメイカーのヨゼフ・マソプストだった。
当時のチェコスロバキア
チェコスロバキアは1960年のユーロ第一回大会で3位になったものの、その大会は西ドイツ、イタリア、イングランドといった有力な強豪国が参加していなかったため、さほど評価されていなかった。
2年後も同様に、一定の力を持ちながら優勝候補とまでは言い難かった古豪チェコスロバキア。
だが本戦が始まると、持ち前の堅実な試合運びで大会を勝ち残っていった。
GKビリアム・シュロイフを中心に相手の攻撃を耐え凌ぎ、少ないリスクで確実に仕留められるチャンスを伺い続け、遂には決勝戦に挑む権利を得たのだ。
そして、この躍進するチームの攻撃を操っていたのがマソプストだ。
チェコスロバキアを牽引したヨゼフ・マソプスト
マソプストはセンターハーフのポジションを務め、卓越したテクニックで相手のプレスを避け、的確なパスを散らしてゲームをコントロールしていた。
全6試合に出場し、ブラジルとの決勝戦では貴重な先制点を決めるなど、大会最優秀選手賞の2位に選ばれる活躍を見せた。
この年のマソプストは、クラブレベルでも国内の強豪クラブであるデュクラ・プラハをリーグ優勝に導いており、年間を通してバロンドールに相応しい成績を残したと言える。
しかし、それはヨーロッパ出身の選手に限った場合の話だ。
世界の全選手に範囲を広げて見たとき、1962年の主役と称されるのは紛れもなくブラジルのガリンシャだろう。
ワールドカップで無双したガリンシャ
1958年FIFAワールドカップで優勝を果たしたブラジルは、翌1962年大会でも優勝候補の一角として期待されていた。
エースのペレはその期待に応えるように初戦から1得点1アシストと実力を発揮したが、続く第二戦で負傷して以降は試合に出られなくなってしまった。
絶対的な存在を失ったブラジルだったが、前回王者にはペレに匹敵する実力者がもう一人いた。それが世界最高のドリブラーと呼ばれたガリンシャだ。
ガリンシャは独特のテンポのドリブルでサイドを切り崩し、ブラジルの攻撃を活性化させた。
それと同時に、得点源だったペレの役割をもこなすかのように4得点を挙げ、大会得点王に輝いた。
ガリンシャの八面六臂の活躍により、ブラジルは見事にFIFAワールドカップ連覇を達成した。
前述の通り、ヨゼフ・マソプストは大会最優秀選手賞の2位に選ばれたのだが、その1位はガリンシャだった。
また、ガリンシャは所属クラブのボタフォゴもリオデジャネイロ州1部リーグとリオ・サンパウロリーグ優勝に導いており、両コンペティションで最優秀選手賞に輝いている。
以上のことを踏まえれば、バロンドールが全世界の選手を対象としていたなら、ヨゼフ・マソプストよりもガリンシャの方がより同賞に相応しかったとすることにも頷けるのではないだろうか。
- 2020.07.01 Wednesday
- バロンドール
- 20:46
- comments(0)
- -
- by soccer-nan